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突然ですが、「リーダーシップ」と言う言葉を耳にすると何を想起するでしょうか?

 

○ 孫正義?

○ 徳川家康?

○ バラク・オバマ?

○ ネルソンマンデラ?

○ ナポレオン?

○ 目標に向かってチームを引っ張る人?

○ 人を育てる人?

○ 先頭に立って問題を解決する人?

○ ビジョンを有し、聡明な先見性を有している人物?

○ 人々を魅了するようなカリスマ性?

 

実際に多くのリーダーの皆様に同様の質問をすると、様々な答えが返って参ります。

 

因みに大辞林を調べてみると

 

[1] 指導者・統率者としての地位・任務。

[2] 指導者としての能力・資質。統率力。指導力。

 

と書かれています。

 

リーダーシップと言う言葉は、余りにも概念が広いため、一人一人に様々な「定義」が存在しています。

 その中でも、敢えて言うならば、リーダーシップを「指導力」と、捉えているビジネスパーソンが少なくありません。

 この「指導者、指導力」と言う言葉の延長線上に、上述したようなリーダー像が広く知られるようになってきたのではないでしょうか。

 

勿論、このような「指導者、指導力」は事業の発展・拡大に多大な成果をもたらしてきましたし、今後も、チームに必要不可欠のリーダーシップ機能として存在していくものと思われます。 一方では、最近、多くの組織やチームの活性化サポートを通じて考えさせられることがあります。

 それは、「指導」の過剰使用(或いは誤使用)による、部下と上司の関係性(組織システム)の硬直化が多くの組織やチームで発生しているということです。

 

 

「指導者」と言う言葉には

 

「正しい者」が「間違っている者」を正す。

 

と言う、目に見えない、意図が強く存在しているように思われます。

 

 

「正しい者が間違っているものを正す」

これが過度に行われるとどうなるでしょうか?

 

「上司」は絶えず「部下」の「間違い」を探し、直そうとします。一生懸命な上司であれば、それは尚更です。

自然と、ポジティブなフィードバックよりも、ネガティブなフィードバックの量が増えて参ります。

 

一方、部下は、ポジティブフィードバックとネガティブフィードバックのバランスが崩れるに従って、もっともらしい言い訳をしたり、他に責任を転嫁するなどの「自己防衛」や、表面だけ上司の指導を受け入れたり、納得を装う、悪いニュースを隠蔽する、或いは何らかの理由を作りだし、退職するなどの「回避・逃避」を増やしていきます。

 

そして、そのような「自己防衛」や「回避・逃避」に対し、上司は、更に「そのような間違いを正す」ためのネガティブフィードバックを通り越しネガティブアタック(攻撃)を展開します。 そして、更に部下は「自己防衛」と「回避・逃避」を、巧みに、そして静かにカウンター(迎撃)展開していきます。 それは徐々にエスカレートし、表面穏やかな、しかし身動きの取れない関係性(硬直化チーム)へと変容をはじめます。

 

業績が好調ならば、好業績の影に潜伏しているだけの場合も少なくないのですが、ひとたび業績が悪化すると、それは表面に姿をあらわし

 

○ エース的キーパーソンが辞める(チームから離れる)

○ 退職(指導者への最終ボイコット)が発生する

○ 横領の発生(組織の自律・秩序システムの決壊)

 

などの関係性崩壊(組織システム異常)シグナルを出しはじめます。

 

これでは本来、必要な柔軟性・機動性が失われた状態となってしまいます。

 

※ただし、会社の黎明期や倒産危機等の「緊急事態時」は、「過剰な指導」は必ずしも組織やチームは硬直化せず、生命確保・生命危機回避と言う本能的共通目的を熱源に、軍隊のような「上意下達」が目覚しい組織力を発揮する場合が少なくありません。

 

このようなチームの関係性(組織システム)の硬直化要素を、関係性や組織を扱う専門家は「4つのテロリスト因子」や「4つの危険因子」と位置づけて
います。


「4つのテロ因子」とは以下を言います。


① 批判:上司(正解者)が部下(間違っている者)を批判する
② 防衛:批判された部下は、防衛する
③ 侮辱:防衛された上司は、相手の人間性を含めた批判=侮辱をはじめる
④ 回避:侮辱された部下は、無視や表面上の服従、あるいは離脱をする

 

* * * *

 

とあるご縁で知合いとなった、地方の老舗精密機器商社があります。

 

この会社は創業者の長男であるA氏により、派手さはないまでも、地道なバリューチェーン構築と営業努力により安定成長を遂げて来ました。
そのような中、米国でMBAを取得し、論理性優れた視点とイニシアティブを有した、A氏の次男N氏が社長に就任しました。
業績安定期は、何事もなく、むしろ、社屋の改装、能力主義人事制度改革、部課長会議制度導入、社員旅行の実施等々、次々と改革案を打ち出し、訪れる度に、会社がアカデミックかつ華やかになっていくのですが、それとは裏腹にA氏時代の笑顔や冗談の飛び交っていた社員からそれらが消え、どこかよそよそしくなっていったことに少なからず違和感を抱いておりました。

 

それから数年が経過し、リーマンショックが経済界を襲いました。

 

業績は低迷しはじめ、ある時、エースクラスの社員が次々と退職すると言う現象が起こりました。

そのような中、役員会議のファシリテーターを要請され、本格的に介入をさせて頂いたのですが、まさに経営チームは「4つのテロ因子」の海となっておりました。即ち、N社長の「批判、侮辱」に対し、他の経営陣が「防衛と回避」を繰り返すと言う様相です。
加えて言うならば、N社長の話す内容は、論理的に正論であり、理屈としては隙がなく、本人も、経営陣を「批判・侮辱」しているなどとは、全く思って
おりません。社長の発言に、経営陣はグウの音も出ません。これでは、折角の会議も、何かを前に進めるどころか、より硬直化していくばかりです。


もう少し、身近なイメージを持つならば、「N社長」と「経営陣」を「妻」と「夫」、あるいは「親」と「子」に例えてみると良いかも知れません。
この関係において「4つのテロ因子」を出し続けたとしたらどうなるでしょうか?


妻あるいは夫が正論と言う名の批判・侮辱を放つ。妻あるいは夫は防衛・回避を続ける。親が正論と言う名の批判・侮辱を放つ。子は防衛・回避を続ける。多分、最後は、離婚、別居(家庭内別居も含め)、家族システムからの離脱と言う結末を迎える可能性がとても高くなるのではないでしょうか?まさに、上述の経営チームはそのような状況に陥っていたのです。

 

では、このような状況下で、どのような対応をすることが良いのでしょうか?

 

もし、あなたがこの会社のリーダー、或いは、コンサルタントであれば、どんなアドバイスをするでしょうか?

 

私が、この経営チーム、特にN社長との個別コーチングで見出した対応策は次の4点でした。


① 4つのテロ因子を自覚する
(直すのではなく、発生していることを認識する)


② 共通の目的を確認する
(問題解決会議の前に再建ビジョンの共有化をする)


③ ポジティブフィードバックを増やす
(経営陣の良い点、頑張っている点を意識的に見出し、伝えること)


④ ネガティブフィードバックを工夫する
(具体的行動に絞り、可能なかぎりその場で、また、一旦は上司であるA社長自身の問題でもあることを具体的に告げること)

 

以上の4つのアイデアを、先ずはA社長が実践、次に役員全員で実践、次に部課長で実践という形で、一歩ずつ展開をしていきました。 完全にとは言わないまでも、今では、会議が前に進み、討議・決定されたことが、現場で実践され、更に工夫・改善されると言う姿を取り戻しはじめています。つくづく、人間は「論理的・理性的」だけではない、「感情的・情緒的」生き物であるのだと思います。

 

もし、あなたの組織やチーム(ご家庭も含め)で、同じことが繰り返す、或いは、硬直状態から抜け出せないと言う状態にあるならば、それは「4つのテ
ロ因子」が蔓延しているからかも知れません。その時は、是非、上司(権力や立場の優位な側)であれば、批判・侮辱を、部下(権力や立場の劣勢な側)であれば防衛・回避を自覚的に弱めてみること、更には、N社長の実施した4点を強化することをお勧め致します。